'06 モンゴルツーリング


7月26日 出発


はちきれんばかりの荷物をスーツケースに詰め込んで
AM7:10新大阪発の新幹線に乗り込み成田空港へ向かう
モトクロスブーツを履いて歩くと歩くたびにカチャカチャと音が鳴るので周りから 変な目で見られながらも成田空港に到着
AM11:30発のウランバートル行きの飛行機に乗り込む
モンゴル行きの飛行機には相撲取りやバックパッカーの姿もあったがモトクロスブーツを 履いているのは俺達だけであった


少し遅れて18:00にウランバートルのチンギスハーン空港に到着
空港にはモンゴル常駐の大島さん、通訳のトヤさん、運転手のバギが迎えに来てくれた
ドイツ人の経営するレストランで明日からのオリエンテーションを兼ねて夕食をとる
明日からの旅に備えて体力をつけるためT−BONEステーキを食べる

大島さんの説明では今回参加したハーフサポートプランでは
行き先とか食事の内容、タイミング等全てを俺達で決めるとのこと
右も左も分からない土地でいきなりそんなことが出来るかどうか多少不安になったが
まあやればなんとかなるだろうと思って何も考えずに了承した
一通りの説明を聞いて今日の宿泊地チンギスハーンホテルに送ってもらう
このホテルには映画の撮影で反町隆と菊川玲も泊まっていたらしいが会うことはなかった
明日からの旅に備えてビールを飲んで眠ることにする

7月27日 いざ大草原へ!


朝、目が覚めると外は雨!
一気にテンションダウン↓
とりあえずモトクロスウェアとブーツを身につけホテルのロビーで迎えを待つ
約束どおり9:00に大島さんとバギが迎えに来てくれた
「雨ですね〜」「はぁ〜そうですね〜」とローテンションのままバイクを置いているガレージへ向かう
ガレージには2台のセロー(輸出車なのでXT)とロシア製のバンが準備されていた


バイクのチェックをしていると雨がほとんど上がった
空には分厚い雨雲が広がっていたが「これはいけるかも」少しだけテンションが上がった
荷物をバンに積み込み、通訳のトヤさん、ドライバーのトゥグがそのバンに乗り込み
小雨の降る中いざ出発!!

右側通行に多少戸惑いながらもウランバートル郊外へ
このあたりで雨が本降りになってきたのでカッパを着る
心配だからと言って大島さんもついてきてくれていたがここでお別れとなる
ここからはトヤさんとトゥグを含めた4人の旅が始まる
雨の中トウケンという町を目指して走るが、30分もすると体が冷え切った
雨は予想以上に冷たくカッパの下にフリースを着込む

そしてトウケンに到着した頃には雨は土砂降りになっていた
時間が13:00だったのでトウケンの食堂で食事をする


雨で走る気があまりしなかったのでゆっくりと食事をしているとトヤさんが雨について話をしてくれた
モンゴルの人にとって雨はとても「やさしい」もので
雨のおかげで牧草が育ち自分達の生活が成り立っている
だから雨が好きだし雨はとても「やさしい」ものである
昔からの言い伝えで「やさしい」人が来ると雨が降るという
だから俺達二人はとても「やさしい」人ですと言っていた
そんな話を聞いたおかげで少しだけ雨に対するいやな思いが和らいだ

2時間くらいかけて食事をとって外に出て見ると雨はほとんど止んでいた
ここから更に南へ向かうのだがその南の空に晴れ間が見えた
一気にテンションアップ!!
そして舗装路が終わりダートに差し掛かったところで太陽が顔を出した


目の前には青くて広い広い空と大草原が広がっている
これぞまさに思い描いたとおりのモンゴル!
感激です!!
進むうちに天気はどんどん回復し360°見渡す限り青空になった
まるで映画のワンシーンのような風景の中を駆け抜ける

途中見晴らしのいい丘の上で休憩しているとバイクに乗った遊牧民が近づいてきて同じ場所で休憩をした
そうしていると二人乗りのバイクがもう一台、更にもう1台寄って来た


彼らは近くのゲルに住んでいるという
そしてゲルに寄って馬乳酒を飲んでいってくださいと誘われたのでお邪魔することにする
遊牧民と5台のバイクで少しの間ツーリングを楽しんでゲルに到着
ドキドキしながらゲルに入ると中にはベッドが3つと中央にストーブ、そして奥には神棚のようなものがあった
ベッドに腰掛けるとその家の子供が茶碗に馬乳酒をなみなみとついで持って来てくれた
飲んでみるととても酸っぱくて乳臭い味がした
遊牧民はこの馬乳酒をお茶代わりにゴクゴク飲むのだが俺達は全部飲み干すことが出来なかった
しかし、見ず知らずのましてやとんでもない格好をした外国人の俺達をゲルに迎え入れてくれて
しかもいろいろご馳走をしてくれる遊牧民の心の広さは素晴らしいと感心した


お礼を言ってゲルを出て目的地のお母さんの岩を目指す
途中見晴らしのいい丘の上で小休止
自然の岩に登って遊ぶ


目的地のお母さんの岩につくとそこには関取の旭天鵬がいた
彼は日本での生活が長いのでとても日本語が上手だった
そしてそこでもまた馬乳酒を頂いた
旭天鵬は「馬乳酒は決しておいしいものではないよな〜」と笑っていた



お母さんの岩は男の人は左耳に女の人は右耳にひそひそ声で願い事を言うとかなえてくれる
明日からも晴れるよう願い事をした

そしてGPSを使ってジャミンさんという遊牧民のゲルを目指す
轍を走っているとGPSの矢印が横を向いてきたので草原を突っ切ることにする
轍はとても走りやすいのだが草原は小動物の巣穴があったりガレ場があったりでなかなかペースが上がらない
そしてGPSが指し示すジャミンさんのゲルの位置に到着
しかしそこにはジャミンさんのゲルは無かった
どうやら移動したらしい
近くのゲルでジャミンさんはどこに移動したのかを聞くとここから南へ20kmほどいったところとのこと
この時点で既に19:00を過ぎていたので今日はこの近くでテントを張ることにする
日本のようにテントサイトがあるわけではなく、どこでも好きなところにテントをはれるのが素晴らしい
テントを設営し晩御飯の準備をする
トヤさんの提案でフォッショルを作ることにする


それからバジルのスパゲッティー、オムレツを作った
しかし途中で飲んだ馬乳酒のせいで全部食べきれなかった
馬乳酒はとても栄養が高く腹持ちがいいため夏は馬乳酒を主食にする人もいるらしい
夜は11時くらいまで明るいので片付けもすんなり終わった


7月28日 ナーダム


遊牧生活2日目
朝9時に起きる
草原の上に建てたテントの寝床は案外やわらかく良く眠れた
ゴソゴソ起き出すと既にトヤさんが朝食の準備に取り掛かっていた
昨日のフォッショルを暖めなおしたもの、サラミときゅうりのサンド、モンゴルパン、コーヒー
豪華な朝食に絶好のロケーションのせいでついついここでものんびりしてしまう
なんて贅沢な一時なんだろうと思いながら人生最高の歯磨きを済ませ出発したのは結局11時頃
とりあえずジャミンさんのゲルを目指して走ること約1時間
途中のゲルでトヤさんが道を尋ねながら進むのだが、GPSなしで何で行き先が分かるのかが不思議
俺達にはどこも同じような景色に見える

ジャミンさんのゲルに到着してまずは馬乳酒を頂く
モンゴルではこの馬乳酒はどうやら避けて通れない道らしい


話を聞くと今日は村のお祭り「ナーダム」が開催されているのでジャミンさんも馬も出かけているとの事
これは見に行くしかない!
ということでスニッカーズで昼食を済ませて会場へと向かう
開場の特等席には市長の観覧席が設けられその周りにゲルやトラックの食堂、売店が立ち並ぶ
そしてその周辺には点々と出場者のゲルやテントがある
到着してバイクを止めると、馬に乗った遊牧民達に囲まれた
皆もの珍しそうに次々と近寄ってくる
いろいろと何か言ってくるのだが分からなかったが、恐らく俺達が珍しかったのだろう


ナーダムでは競馬をやっていて20kmのレースだった
騎手は12才以下の子供で70頭くらいのレースだった
ゴール地点で待っていると遠くから砂煙を上げながら先頭集団が帰ってきた


小学生くらいの子供が馬を上手に操っていた
中には女の子もいてびっくりした
このレースで勝つことはとても名誉なことで、優勝した子供はとても喜んでいた
モンゴル相撲も見たかったが、相撲は明日だということで今日はこの近くでテントを張ることにする
近くにちょうどいい湖があったのでその湖のほとりでテントを張ることにする

時間はまだ17時頃だったので今日はゆっくりと夕食をとる
のんびりと時間が流れ、食事を済ませた後は宴が始まった
そこでモンゴルの40°のお酒アルヒが登場!
飲む前にビンについているスクラッチを削ると馬のマークが4つ並んだ


馬は一番いい目で4つそろうことはめったにないらしい
ポーカーで言うとロイヤルストレートフラッシュみたいなものだということ
そんなラッキーも飛び出し乾杯をしてお酒が進む
飲んでいるうちに歌でも歌おうということになりトップバッターはトゥグ
トヤさんに半強制的に歌わされることになった
しかし、この大草原の中で聞くモンゴルの長唄は心に染み入った


そして次々に皆歌を歌いはじめた
最初は少し恥ずかしかったがこの景色の中アカペラで唄うのはすごく気持ちが良かった
歌に言葉の壁はないことを実感した
この夜を境にトゥグとトヤさんとよりいっそう打ち解けられた
その後もバイクに乗ったりバンを運転したりして遊んだ

7月29日 プルウェ一家


8:00起床
今日も晴れ!イェイ!!


この日は日本人2人で朝食を作る
昨日の情報では今日の10時からモンゴル相撲が開催されるとの事で早めに朝食を済ませて出発する
10:30にナーダム会場に着くとモンゴル相撲ではなく競馬をやっていた
1時間くらい待ったが相撲が始まる気配はまったく無かった
これがモンゴル時間なのであろう
タイムスケジュールを気にするなんて事はまったくナンセンスなことだと理解した
今日は馬に乗りたいと思っていたので
時間がもったいないのでモンゴル相撲観戦はあきらめて馬に乗れるゲルを探すことにする
近くのゲルで馬に乗れるか聞いてみるが、ナーダム近くのゲルは皆ナーダムに参加しているため馬は出払っていた
ナーダムから離れるため2時間ほど走る
そこでプルウェさんという人が気性の穏やかな持っていて、乗ってもいいということだった
馬が見つかったところで昼食をとる
モンゴルうどんとサラダを作った
そして今日はもうここに泊まる事に決めたのでゲルの傍にテントを張る
プルウェさんのゲルに入るとまずはお決まりの馬乳酒攻撃を受ける
しかし、この家の馬乳酒は今までの中で一番美味しかった
というより馬乳酒に慣れてきたのかもしれない
外に出てトゥグが引っ張ってくれる馬に乗る


進めは「チュー」と言うのだがオレが「チューチュー」と言ってもぜんぜん馬は進んでくれない
トゥグが「チュー」というと馬はどんどん進むのに・・・・
まったくなめられたもんだ
馬はけっこう振動が大きくて歩くときには鞍に座っていても大丈夫だが
早足になると座っているとお尻が痛いし立つとバランスをとるのが難しく、けっこう体力がいる
大草原の中を馬で進むのはバイクとはまた一味違った爽快感があった
トゥグが馬にまたがり草原の丘を駆けていく姿は何とも格好よい


俺達もバイクなら同じように走れるのでバイクと馬でモンゴルの大地を駆けた


その後、牛、馬、羊、ヤギの乳搾りをしていると、おじいさんが俺達のために家畜のヤギを一頭ごちそうしてくれるという
100頭以上のヤギの中から今年子供を生まなかったというメスのヤギをつかまえ解体が始まる
もちろん解体を見るなんて初めてでビビッていたが食べさせてもらうのにそれを見もしないのは失礼に当たると思い
ヤギの解体を隣で見ていた
さっきまでそこで「メェ〜」と鳴いていたヤギがどんどん解体されていく
ショッキングな光景におもわず固まってしまう
家畜の毛は防寒具に皮は家の材料に肉は家族の食料に骨は子供の遊び道具になるらしい
全て捨てることなく有効に利用される
俺達が普段食べている肉は必ずこんな作業を経ているんだと思いとても貴重な体験ができた

解体がほぼ終了した時点で今度は2人だけでバイクトレックに出かける
GPSでゲルの位置を登録して出発!
とりあえず視界の中で一番高いところを目指す
2つくらい丘を越えるともうゲルの位置はGPSなしでは分からなくなっていた
あまり遠くへ行くのは心細かったので近くで写真を撮ったり家畜に近づいたりして遊ぶ


帰ってくるとちょうどさっきのヤギが焼肉なっていた
解体現場を見て出来上がった料理を食べられなかったらどうしようという心配はなんのそのであった


食べてみると匂いもなくとてもうまい!
プルウェさん一家と一緒に肉をがっつく
そうしているとプルウェさんがアルヒを持ってきて一人づつついでいく
昨日もこのアルヒで盛り上がったが、どうやら今日もアルヒで盛り上がりそうな雰囲気
そうしている間にプルウェさんは出来上がってしまった
遊牧民と言うよりただの酔っ払いと化したプルウェさんは
オレのサンダルをみて「オレのと交換しろ」と言ってきたので「ええよ」と言って交換した


それを見てプルウェさんの娘(5才)は「お父さんバカ〜」と言っていた
オレも酔ってきてデールを着させてくれと言ったら快くOKをもらった


さらに酒のすすんだプルウェさんは俺に向かって
「お前は一人で日本へ帰れ!裕子は弟の嫁にする!」などと本格的な酔っ払いになってしまった
酔っ払うと口が悪くなるのはモンゴルでも同じようだ
でもプルウェさんは少しコワモテだが、陽気で憎めないキャラなので全く悪い気はしなかった


7月30日 ウランバートルへ


朝4:30日の出前
星を見ようと眠い目をこすりながら起きる
テントから出るとそこには雲ひとつなく満天の星空が広がっていた
頭の上はもちろん地平線上にまで星が瞬いている
宇宙にはこんなにもたくさんの星があったのかと思うくらいすごい数だった
そしてそれらのどれもが煌いている
流れ星もたくさん見えた

6:30
今度は日の出を見るために起きる
真っ暗だった大草原に徐々に日が昇りあたりを照らす
その色合いは今まで見たことも無いような美しい色だった
時間と共にその色は次々と変化していく



今日はウランバートルに戻る日である
昨日お世話になったプルウェさんにお別れの挨拶を告げる
ほんの少ししか一緒にいなかったけど別れる時はなぜかすごく物悲しく感じた
最後に家族全員の写真を撮り、お礼を言って出発する


ウランバートルまで直線距離で約150Km
GPSを頼りにひたすら走る


今日のお昼は時間がないのでカップラーメン
ウランバートルが近づくにつれ轍が太くなりまた、時折対向車も見かける
最後の草原風景を楽しむようにゆっくりと走る


ウランバートルには17:00に到着
デパートでお土産を買った後、レストランで食事をする
モンゴル最後の晩餐を楽しむ
そしてホテルで旅の疲れを癒す

7月30日 グッバイモンゴル


朝、ホテルへトヤさん、トゥグ、大島さんが迎えに来てくれる
一緒にバンに乗り込み空港へ
空港で別れを惜しみながら何度もありがとうと言ってトヤさんと分かれて飛行機に乗り込んだ